
加齢黄斑変性症について
◆ 加齢黄斑変性症とは
加齢黄斑変性は、米国をはじめとする欧米先進国においては、成人(特に50歳以上)の中途失明※の主要な原因となっています。日本においても、近年の急激な高齢者人口の増加や生活習慣の欧米化などに伴い、患者数が増加しています。日本では患者数は男性のほうが多く、年齢が高くなるにつれて増加します。
また、喫煙者に多いことが知られています。
加齢黄斑変性を主とした黄斑変性症は、視覚障害者の原因疾患の第4位です。
●視覚障害者手帳交付の原因疾患
第1位 |
緑内障 |
第2位 |
糖尿病網膜症 |
第3位 |
網膜色素変性 |
第4位 |
黄斑変性症 |
第5位 |
高度近視 |
網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究平成17年度総括・分担研究報告書42.
わが国における視覚障害の現状
◆ 眼の構造と働き
●眼の基本構造
眼に入った光の情報は「角膜」「瞳孔」「水晶体」「硝子体」を通って「網膜」の上に像を結びます。その情報は「視神経」を通じて「脳」に伝えられ、最終的に映像として認識されます。
眼の働きはしばしばカメラにたとえられ、水晶体はレンズ、網膜はフィルムの働きをしているといわれています。
黄斑、中心窩とは
●眼底の正面図(正常な眼)
写真提供:日本大学 湯澤 美都子先生
黄斑の範囲は、厚生労働省 網膜脈絡膜・視神経萎縮症研究班「加齢黄斑変性の分類と診断基準」に準じました。
黄斑は、網膜の中でも視力をつかさどる重要な細胞が集中している中心部で、ものの形、大きさ、色、奥ゆきなど光の情報の大半を識別しています。この部分に異常が発生すると、視力の低下をきたします。
また黄斑の中心部には中心窩かという最も重要な部分があり、この部分に異常をきたすと、視力の低下がさらに深刻になります。
◆ 加齢黄斑変性には2種類のタイプがあります
●黄斑部の断面図

-滲出型-
脈絡膜から異常な血管(脈絡膜新生血管)が生えてくることによって起こるタイプです。新生血管は破れやすいため、出血したり、血液中の成分がもれ出して、黄斑が腫れ、ものを見る細胞の機能が障害されます。病状の進行が速く、急激に視力が低下していきます。
-萎縮型-
加齢により網膜の細胞が変性し、ドルーゼンと呼ばれる老廃物が蓄積して栄養不足になります。その結果として、網膜の細胞が徐々に萎縮していくタイプです。滲出型と比較すると病状の進行は緩やかです。しかし、時間の経過とともに新生血管が発生し滲出型に移行することもありますので、定期的に眼科医の検査を受けることが必要です。
◆ 『滲出型』加齢黄斑変性の自覚症状
加齢黄斑変性では網膜の中心部である黄斑が障害されるので、ものを見ようとしたときに視野の真ん中が影響を受けます。進行とともに次のような症状が現れます。
変視症
見たい部分がゆがんで見えます。
視力低下
見たい部分がぼやけて見えます。
中心暗点
見たい部分が黒くなって見えます。
コントラスト感度低下
見たい部分が不鮮明に見えます。
◆ 生活上の注意
喫煙が加齢黄斑変性の危険因子であることがわかっています。すぐに効果が現れるわけではありませんが、できるだけ早く禁煙することが大事です。
もう一方の眼にも発病するおそれがあるので、日ごろからアムスラーチャートを使って自己チェックしましょう。
◆ 自己チェックのしかた
加齢黄斑変性はできるだけ早く治療をはじめて、病状の進行を食い止めることがとても大切です。治療中も早めに異常を発見するために、右のような「アムスラーチャート」と呼ばれる格子状の表を用いて確認しましょう。
確認するときは、
- 1. アムスラーチャートは30㎝離してください。
- 2. 必ず片眼ずつチェックしましょう。
- 3. 老眼鏡はかけたままチェックしましょう。
※治療中の眼だけでなく、もう一方の眼もチェックしましょう
加齢黄斑変性 チェックシート
(アムスラーチャート)

この検査は、眼科でも行われます。