網膜静脈閉塞症について

網膜静脈閉塞症

網膜静脈閉塞症

◆ 眼の構造と働き

●眼の基本構造
●眼の基本構造

眼に入った光の情報は「角膜」「瞳孔」「水晶体」「硝子体」を通って「網膜」の上に像を結びます。
その情報は「視神経」を通じて「脳」に伝えられ、最終的に映像として認識されます。
眼の働きはしばしばカメラにたとえられ、水晶体はレンズ、網膜はフィルムの働きをしているといわれています。

◆ 黄斑の大切さ

●眼底の正面図(正常な眼)
●眼底の正面図(正常な眼)
写真提供:日本大学 湯澤 美都子先生
黄斑の範囲は、厚生労働省 網膜脈絡膜・視神経萎縮症研究班「加齢黄斑変性の分類と診断基準」に準じました。

黄斑は、網膜の中でも視力をつかさどる重要な細胞が集中している中心部で、ものの形、大きさ、色、奥行、距離など光の情報の大半を識別しています。
この部分に異常が発生すると、視力の低下をきたします。また黄斑の中心部には中心窩という最も重要な部分があり、この部分に異常をきたすと、視力の低下がさらに深刻になります。

◆ 網膜の血管について

網膜中心動脈と網膜中心静脈は、視神経の中を並んで走っており、視神経乳頭のところで4本に枝分かれして網膜に広がっています。
心臓から動脈を通って網膜へ入ってきた血液は、毛細血管へ分かれて末梢である網膜の細胞に酸素や栄養を渡し、老廃物を受け取って静脈に入り心臓へ帰ります。

●網膜内の血管分布

●目の断面 ●眼底

◆ なぜ網膜の静脈が閉塞するのか

動脈と静脈の視神経内で並行して走っている部分および網膜内で交叉している部分は、血管の膜を共有し、接しています。
したがってこの部分で動脈硬化が起こると、動脈が静脈を圧迫して静脈内の血流が滞ります。そうすると血液が凝固し血栓ができて静脈が閉塞します。

●静脈が閉塞するしくみ

●静脈が閉塞するしくみ

◆ 網膜の静脈が閉塞するとどうなるか

正常な場合

静脈が閉塞してうっ血し、静脈内の圧力が高まると、閉塞した箇所の上流部分の網膜へ血液や水分が漏れ出て、眼底出血を起こしたり、網膜がむくんだり(網膜浮腫)します。

網膜静脈が閉塞した場合

◆ 網膜静脈閉塞症の種類

●静脈が閉塞するしくみ
●静脈が閉塞するしくみ

網膜静脈閉塞症には、2種類あります。
・網膜内の静脈が閉塞するもの
網膜静脈分枝閉塞症
(BRVO:Branch Retinal Vein Occlusion)
・視神経内で静脈が閉塞するもの
網膜中心静脈閉塞症
(CRVO:Central Retinal Vein Occlusion)

◆ 網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)の初期症状

-初期症状-

・静脈の閉塞した場所の上流部分で血液や水分が漏れ、眼底出血や網膜浮腫が起こります。

眼底出血や網膜浮腫が黄斑におよぶと(黄斑浮腫)、視力低下を起こしたり、ものがゆがんで見えたりします。

正常な眼の眼底写真 正常な眼の眼底写真
BRVOの眼の眼底写真 BRVOの眼の眼底写真

・静脈の閉塞した場所によって、自覚症状は無症状から重い視力障害までさまざまです。

急な眼のかすみ

急な眼のかすみ
視野が欠ける

視野が欠ける
出血したところが
黒っぽく見える
出血したところが黒っぽく見える

◆ 網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)の経過と治療

●硝子体出血
●硝子体出血

-経過-

・一般的に、視力の経過はさまざまです。ただし、黄斑浮腫が長期化すると、視力は回復しにくいです。

・時間が経つと、閉塞した静脈のある網膜の血液循環が悪くなることがあります(虚血)。

・虚血になった網膜には、毛細血管の代替としてもろい血管(新生血管)が生じます。この新生血管が硝子体へ伸びて破れることで硝子体出血網膜剥離を引き起こすことがあります。

-治療-

・視力の低下や見え方に異常がない場合は、経過観察します。

 レーザー光凝固:新生血管の発現を予防する処置をします。網膜を焼き固めて新生血管が生じないようにします。
硝子体手術:硝子体出血を起こした場合は、硝子体を切除します。

◆ 網膜中心静脈閉塞症(CRVO)の初期症状

-初期症状-

・静脈の根元が閉塞するため、網膜全体に血液や水分が漏れ、眼底出血や黄斑浮腫が起こります。

急激に視力が低下します。

・静脈が閉塞して網膜の血液循環が悪くなることを虚血といいます。

正常な眼の眼底写真 正常な眼の眼底写真
CRVOの眼の眼底写真 CRVOの眼の眼底写真

・虚血の面積が広いほど黄斑浮腫が起きやすく、視力低下が著しいとされています。

・CRVOには、網膜中心静脈の閉塞が不完全で、網膜の出血が軽度である「非虚血型」と、網膜中心静脈が広く閉塞し出血が多い「虚血型」があります。

急な視力低下 急な視力低下
出血したところが黒っぽく見える 出血したところが黒っぽく見える

◆ 網膜中心静脈閉塞症(CRVO)の経過と治療

-経過-

黄斑浮腫を改善することで、視力回復を目指すことができます。

・時間が経つと、静脈が閉塞して血液循環が悪くなった部分に、毛細血管の代替としてもろい血管(新生血管)が生じます。この新生血管が硝子体へ伸びて破れることで硝子体出血網膜剥離を引き起こすことがあります。また、新生血管が「虹彩」という部分まで伸びて(ルベオーシス)、緑内障を発症することがあります。

・時間が経つと、非虚血型が虚血型に移行することがあります。

-治療-

レーザー光凝固:新生血管の発現を予防する処置をします。網膜を焼き固めて新生血管が生じないようにします。

硝子体手術:硝子体出血を起こした場合は、硝子体を切除します。

◆ 網膜静脈閉塞症の自己チェック

眼底出血や黄斑浮腫による見え方の変化を自分でチェックする方法として、「アムスラーチャート」と呼ばれる格子状の表を用いて確認する方法があります。

確認するときは、

  • 1. アムスラーチャートは30㎝離してください。
  • 2. 必ず片眼ずつチェックしましょう。
  • 3. 老眼鏡はかけたままチェックしましょう。

※治療中の眼だけでなく、もう一方の眼もチェックしましょう

●アムスラーチャート
>●アムスラーチャート

●下記のように見えたり、以前と比べて見え方がひどくなった場合は、担当医に相談しましょう。

線がぼやけて薄暗く見える線がぼやけて薄暗く見える
中心がゆがんで見える中心がゆがんで見える
部分的に欠けて見える部分的に欠けて見える

◆ 生活上の注意

網膜静脈閉塞症の発症は高血圧との関連が強いと言われており、「眼に起こる脳梗塞」と呼ばれることもあります。発症の時期をずらしてもう片方の眼に起きることもあるので、良い方の眼を守るために、高血圧症をコントロールすることを心がけましょう。
また、治療によって症状が落ち着いた後、再び網膜がむくみ、見えづらくなったり、出血が起こるおそれもあります。網膜が傷むのを防ぎ、失明につながる恐れがある合併症*を起こさないためにも、定期的に検査を受けるようにしましょう。

<高血圧症の生活習慣の修正 6つのポイント>
高血圧症をコントロールするために、薬物療法だけではなく生活習慣の修正も、きちんと目標を立てて、できることから取り組むことが大切です。

日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009」より作成
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009」より作成

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