ドライアイ(角膜乾燥症)

ドライアイ(角膜乾燥症)

普段、目の表面は涙の膜で覆われ、保護されています。このとき、涙は外側から「油層」「液層」の2層構造となっています(以前は「油層」「水層」「粘膜層」の3層構造と定義されていました)。油層はマイボーム腺から分泌される油の層であり、涙が空気中へと蒸発するのを防いでいます。一方で涙の95%を占める液層にはタンパク質などのさまざまな成分が含まれており、細胞への栄養の供給、傷の治癒などの役割を担っています。涙そのものの量が少なくなったり、成分が変化すると、目の乾きを感じるようになり、これを「ドライアイ」と呼びます。ドライアイ患者は、潜在的な数を含めると、国内だけで約2,200万人いるといわれています。これには、パソコンやスマートフォンの長時間使用、コンタクト装用者の増加なども関係しているものと考えられます。

涙の働き

以下のように、涙は実にさまざまな役割を果たしています。

乾燥を防ぐ

涙が目の表面を覆うことで、乾燥を防いでくれています。

酸素・栄養の供給

涙によって、目の表面の細胞へと酸素・栄養が供給されています。

異物侵入防止・乾燥帽子

目に入ろうとする異物を、涙が洗い流してくれます。また、涙に含まれるリゾチームによって、微生物の感染を防ぎます。

傷の修復

涙には、目の表面の傷を修復する成分が含まれています。

光の屈折を正常化する

涙があることで目の表面が滑らかになり、光が正常に屈折し、ものを正しく見ることができます。

ドライアイの目の症状は?

目が疲れやすい

目が疲れやすい目に疲労を感じることはありませんか。特に、休んでもなかなか疲れが取れない慢性のものは注意が必要です。

目が乾く

使い過ぎたときだけでなく、日常的に目の乾きを感じるときには、ドライアイを疑いましょう。

ものがかすんで
見える

新聞や本を読むとき、テレビを観るとき、その他さまざまな場面で、文字や物がかすんで見えることがあります。

ゴロゴロとした
違和感、不快感

まぶたの裏に異物があるような違和感、なんとなくの不快感などが生じます。

ドライアイチェックシート

軽度でも長い期間みられる症状(年に1、2度程度は除く)にチェック☑しましょう。

  • 目が疲れやすい
  • 目が痒い
  • 目に痛みがある
  • 目が重たい感じがある
  • 目やにが出目が赤くなることがある
  • 目がゴロゴロする
  • 目になんとなく不快感がある
  • 理由なく涙が出ることがある
  • 目の乾きを感じる
  • ものがかすんで見える
  • 光を眩しく感じやすい

上記のうち、5つ以上に該当する方は、ドライアイの可能性が高いと言えます。

ドライアイの原因や環境

涙の量の
減少・成分の変化

  • 加齢
  • 不規則な生活(特に夜更かし)
  • シェーグレン症候群による涙腺の異常
  • 降圧剤、精神安定剤の副作用

涙の
蒸発しやすさ

  • 空気の乾燥
  • エアコンの風が直接あたる
  • 目が大きい

まばたきの少なさ

  • 長時間・頻繁なスマートフォン、TV・携帯ゲームの使用
  • 長時間のパソコン作業、読書

その他

  • コンタクトレンズの装用
  • アレルギー性結膜炎
  • 紫外線
  • 女性(男性よりドライアイを起こしやすいといわれています)

ドライアイの検査と診断基準

視力検査

ドライアイ以外の目の病気を鑑別のために行います。

詳しくはこちら

細隙灯顕微鏡検査

試薬を点眼し、角膜の傷の有無を調べます。

詳しくはこちら

BUT検査

涙の安定性(質)を調べる検査です。目を一度閉じ、開いたところから、涙の膜が壊れるまでの時間を測定します。
「BUT」とは、「Break Up Time」の頭文字をとったものです。
結果に応じて、以下のように、5つのタイプに分類されます。治療方針を決めるための重要な検査です。

  1. Spot break
    目を開いた直後に涙が類円形に壊れ、角膜の部位としては中央からやや上方に発生します。
    水濡れ性の低下、乾燥感、目の疲れ、鈍重感などを伴います。
  2. Area break
    目を開いた直後に涙が面状に壊れ、角膜の部位としては全面に発生します。
    涙液の減少、乾燥感、目の疲れ、鈍重感、目の痛み、異物感、目を開きづらい、眩しさなどを伴います。
  3. Line break
    フルオレセインの上方の移動中に涙液が壊れ、角膜の部位としては下方に発生します。
    涙液減少、異物感を自覚などを伴います。
  4. Dimple break
    フルオレセインの上方の移動中に類線状に涙が壊れ、角膜の部位としては中央寄りに発生します。
    角膜表面の水濡れ性低下、目の疲れ、鈍重感などを伴います。
  5. Random break
    フルオレセインの上方移動が終わってから不定形に涙が壊れ、角膜の部位としても同様に不定に発生します。
    涙液蒸発が盛んになります。
シルマー検査

涙の量を調べる検査です。下まぶたに試験紙を5分間挟み、試験紙が濡れる長さを測ります。
現在のドライアイの診断の基準には入っておりませんが、必要の応じて検査する場合があります。

ドライアイの診断基準

ドライアイの定義と診断基準についてご説明します。

定義

ドライアイは、「さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、
眼の不快感や視機能異常を生じさせ、眼表面の障害を伴うもの」と定義されています。

診断基準

以下の診断基準を満たした場合に、ドライアイと診断します。

診断基準(1)

「眼の不快感や視機能異常」として、以下の症状が認められる。

  • 目が疲れる
  • 目がゴロゴロする
  • 目が乾いた感じがある
  • 目に不快感がある
  • 目がヒリヒリと痛い
  • 起床時、目が開けにくい
  • 目がくしゃくしゃする
  • 白っぽい目やにがでる
  • 何となく見づらい
  • ときどき霞んで見える
  • 最近視力が低下したようだ
診断基準(2)

「涙液層の安定化の低下」として、BUT検査の結果が5秒以下である。
(正常値は10秒以上)

ドライアイの治療(治し方)

点眼による治療

ドライアイの治療は主に目薬で治療します。
当院では、「TFOT(ティーフォット)」という最新のドライアイ治療を取り入れております。
TFOT(ティーフォット)とは「Tear Film Oriented Therapy」の略で、日本語では「眼表面の層別治療」と訳される、ドライアイ治療の新しい考え方です。

今までは水分を補充するだけの治療でしたが、涙の層別ごとに異常を把握して治療を選択するTFOT(眼表面の層別治療)に移行しており、涙液層の安定性を高めることでより効果的な治療が行えるようになりました。

点眼による治療

※ドライアイの治療は主に目薬で治療します。目薬には、次の種類があります。

人工涙液マイティア点眼液
-【涙の成分に近い人工涙液】

涙に近い成分をもつ点眼液(人工涙液)です。水分の一時的な補給に適しています。

ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ティアバランス・ヒアレイン)
-【ヒアルロン酸を含む角膜上皮障害治療剤】

ヒアルロン酸ナトリウムを主成分とします。
涙の層を維持する効果、角膜の傷の治癒促進効果が期待できます。

ジクアス
-【水とムチンの分泌を促進させる点眼薬】

涙の質を維持するために重要な成分、ムチンを産生促進する点眼液です。
水分の分泌を促し、涙の安定性を改善することができます。

ムコスタ
-【ムチン産生、摩擦軽減、粘膜修復させる点眼】

涙の質を維持するムチンの産生を促進する、レバミピドを主成分とした点眼薬です。
涙の安定性を改善し、角結膜上皮の障害を軽減します。
白く濁っており、点眼後一時的に視界が白くかすむことがあります。

涙点プラグによる治療

点眼治療で十分な効果が得られない場合には、「涙点プラグ」を用いてドライアイ治療を行います。目の表面に溜まった涙の出口である涙点(眼の鼻側にある2カ所の穴)から、鼻腔へと排出されます。この涙点を、人工のプラグで塞ぎ、涙を眼の表面に留める方法です。プラグは固形のシリコン製で、人体に無害です。点眼麻酔をかけ、簡単に取り付けることができます。

涙点プラグによる治療

キープティアによる治療

涙点プラグと似た方法として、「キープティア」による治療があります。
こちらは、体温に触れることでゼリー状に固まる液体コラーゲンで涙点を塞ぎます。
涙点の形に合わせて固まるため、異物感もありません。ただし、2~3ヵ月で溶けてしまうものですので、症状が続く限り、定期的な治療が必要になります。

キープティアによる治療

ドライアイの対策と予防について

ご自宅でできるドライアイの対策と予防についてご紹介します。 少しでも目の乾き、ゴロゴロを感じる方は、一度お試しください。

  • パソコン作業や映画鑑賞など、集中してモニターを見るときには意識的に瞬きをする
  • パソコンモニターとの距離をとる
    (モニターを目線よりやや低くすると、目が疲れにくくなります)
  • パソコン、スマートフォン、タブレットの使用時間を減らす
  • 加湿器などを用い、部屋の湿度を維持する
  • エアコンの風が直接顔にあたらないように工夫する
  • 保湿性の高いコンタクトレンズを使用する
  • コンタクトレンズをやめ、眼鏡にする
  • デスクワーク中は適度に休憩をとる
  • 十分な睡眠をとる

    ドライアイのよくあるご質問

    ドライアイを治療せずに放置しているとどうなりますか?

    ドライアイが進行すると、視力低下だけでなく、頭痛、肩こり、腰痛などの全身症状が現れることがあります。また、ドライアイの背景にシェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、糖尿病網膜症、緑内障、白内障などが隠れていることもあります。

    ドライアイの検査では、痛みを伴う処置は必要ですか?

    視力検査、細隙灯顕微鏡検査、BUT検査、シルマー検査などが行われますが、いずれも通常痛みを伴う処置はありません。お気軽にご相談ください。

    市販の点眼薬だけで良くなることはありませんか?

    ドライアイ患者の増加によって、市販の点眼薬も種類が豊富になっています。ただ、やはり医師による診断のもと、適切な点眼薬を使用することをおすすめします。誤った判断によって市販薬を選択すると、症状が悪化したり、慢性化することもあります。特に、防腐剤の入っている点眼薬は角膜を傷つけることがありますので注意が必要です。

    ドライアイを予防することはできますか?

    加湿器などの使用により室内の湿度を保つ、エアコンの風が直接当たらないようにする、目を酷使する作業をする際には休憩を挟む・意識してまばたきの回数を増やすといったことが有効です。また、パソコンのモニターは目の高さよりやや低い位置にしましょう。モニターを見あげるような姿勢は、ドライアイの原因の1つになります。

    コンタクトレンズを使用しているのですが、ドライアイのリスクは高くなりますか?

    ソフトコンタクトレンズ装用者のうち約80%、ハードコンタクトレンズ装用者のうち約70%が目の乾きを自覚していると言われており、ドライアイと密接な関係にあると思われます。近年では、保水性の高いソフトコンタクトレンズも開発されています。医師と相談した上で、適切なコンタクトレンズを選択しましょう。眼鏡の装用に切り替えたり、眼鏡と併用したりする方法も有効です。

    歳をとると、ドライアイのリスクは高くなりますか?

    加齢に伴い涙腺の機能は低下していくため、涙の分泌量が減り、ドライアイの原因の一つになることがあります。ただ、涙を排出する機能も並行して低下していくこともあるため、加齢によって必ずドライアイになるということではありません。

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