「眼瞼(がんけん)」は、まぶたのことを指します。眼瞼疾患は、まぶたにかかわる病気ということになります。眼瞼下垂、内反症(逆さまつげ)、霰粒腫、ものもらい(麦粒腫)などが、代表的な眼瞼疾患として挙げられます。
眼瞼下垂
眼瞼下垂とは、さまざまな原因によってまぶたが下がり、視界が狭くなる、目が疲れやすいといった症状をきたす疾患です。目を凝らして物を見ようとすることから、肩こり、頭痛などの不定愁訴を伴うこともあります。大きく、「先天性眼瞼下垂」と「後天性眼瞼下垂」に分けられます。おづ眼科クリニックでは、眼瞼下垂の日帰り手術を行っております。
先天性眼瞼下垂
まぶたを持ち上げる筋肉が弱い、その筋肉を動かす神経がないといった先天性の原因によって引き起こされる眼瞼下垂です。
後天性眼瞼下垂
加齢、ハードコンタクトレンズの長期使用、白内障手術時の障害など、後天性の原因によって引き起こされる眼瞼下垂です。
内反症(逆まつげ)
何らかの原因によってまつげが角膜に接触している状態を「内反症(逆まつげ)」と言います。角膜が傷つくことで、異物感、充血、涙が溢れるといった症状をきたします。
正常なまつ毛
内反症
症状と原因
角膜が傷つき、痛み、涙、ゴロゴロとした異物感、充血などが見られます。視力低下をきたすことがあります。内反症は以下のように分類され、原因はそれぞれ異なります。
逆まつげの種類
睫毛乱生
まつげの生える方向・配列が乱れることで、一部のまつげが角膜や結膜に接触している状態です。主に、まつげの毛根で生じる炎症を原因とします。
睫毛内反症
下まぶたの皮膚の盛り上がりによって、まつげの先が眼球へと押し込まれている状態です。乳幼児によく見られます。10歳くらいで下まぶたの皮膚の盛り上がりが解消されることも多いため、経過観察に留めることもあります。
眼瞼内反症
まつげ、そしてまぶた全体が眼球の方を向いてしまう状態です。主な原因は、加齢によるまぶたのたるみ、下まぶたを支える組織の緩みです。
内反症(逆まつげ)の日帰り手術
おづ眼科クリニックでは、睫毛乱生に対する治療、睫毛内反症・眼瞼内反症に対する日帰り手術を積極的に行っており、得意としてます
睫毛乱生に対する治療
睫毛根を切除したり電気分解することによって、まつげの根元を破壊します。通常、2~3回治療を繰り返す必要があります。
睫毛内反症に対する手術
埋没法
水平方向・垂直方向から糸を埋め込み、皮膚と一緒にまつげを食い込ませ、まつげの向きを外側へと矯正します。軽度の睫毛内反症に適している手術です。
切開法(Hotz変法)
まつげのすぐそばの皮膚を切開し、その皮膚の裏からまつげの向きを外側へと矯正します。 中等度・重度の睫毛内反症に適している手術です。
症例によって追加する術式
症例によっては、目頭の蒙古ひだを切開する「目頭切開術(内眥形成術)」、眼瞼の縁の余分な皮膚を切除する「瞼縁切開法(lid splitting)」等を追加します。
眼瞼内反症に対する手術
埋没法
まぶたの裏側から皮膚へと糸を通し、二重まぶたを作ることでまつげの向きを外側へと矯正します。上まぶたの内反症が起こっている場合に適しています。
切開法
Jones変法
下まぶたを牽引する下眼瞼牽引筋群を瞼板に再固定した上で、垂直方向を矯正します。加齢による下まぶたの内反症が起こっている場合に適しています。
Lateral tarsal strip
外側の瞼板を外眼角の骨膜へと固定し、水平方向を矯正します。眼輪筋の水平方向の緩みが強い場合等に適しています。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)
霰粒腫とは、まぶたの中に小さく硬い腫瘤ができている状態を指します。似た病気として麦粒腫が挙げられますが、霰粒腫は細菌感染を伴わない炎症です。
症状・原因
霰粒腫の原因は、慢性疲労、不規則な生活、ストレスなどに伴うホルモンバランスの変化による、マイボーム腺の出口が閉塞して慢性的な炎症が生じます。そのほか、化粧品が原因になることもあります。
目が痛い(眼痛)
目の表面の痛みが生じます。ゴロゴロとした異物感を伴うこともあります。
まぶたが腫れる
まぶたの中に小さな腫瘤が生じることから、まぶたの腫れが生じます。
しこりの中身がでてきた・・これって大丈夫なの?
自然治癒を待っていると、しこり(腫瘤)が潰れ、中身が出てくることがあります。ただ、それで治ったというわけではありません。何度も潰れながら、少しずつ治っていきます。基本的には、そうなる前に切開することをおすすめします。きれいに、早くに治ります。
治療
霰粒腫の治療方法は、年齢、進行の度合い、病変の位置などによって以下のように異なります。その他、進行の程度によっては自然な吸収を期待して経過観察に留めることがあります。特にお子様で赤く目立つ場合、赤く皮膚が薄くなっている場合は早めの治療が必要です。ただ、これには1~2年と長い期間を要します。
切らない治療
切らない治療は以下の3点と特効薬ではないが点眼や軟膏で治療を行うことがあり、数週間から数ヶ月かかります。
また、一ヵ月を限度としてステロイド入りの眼軟膏を使用することもあります。
・「温罨法」
蒸しタオルなどで目を温めてマイボーム腺の通りをよくする
・「リッドハイジーン」
目元を清潔に保つなどを行います。
・「ステロイド局所注射」
霰粒腫への直接注射によって縮小させます。
切る治療
切る治療は以下2点の治療をおこないますが、6歳以上のお子様や恐怖心が強い患者様には笑気麻酔で恐怖心を取り除き行います。
・「経結膜的手術」
まだ霰粒腫が瞼板の中に留まっている、比較的早期の症例で行われることの多い手術です。通常局所麻酔下で、まぶたの裏側から穴をあけ、内容物を取り出します。
・「経皮的手術」
霰粒腫が進行して瞼板のまわりの組織を溶かし、まぶたが外から見て赤く腫れている症例で行われることの多い手術です。赤い腫れがくっきりとして皮膚が薄くなっている場合には、基本的にこちらの手術が選択されます。通常局所麻酔下で、皮膚を切開して内容物を取り出します。
ものもらい(麦粒腫-ばくりゅうしゅ)
まぶたの縁、中で細菌感染を起こし、まぶたが腫れて赤くなっている状態です。「ものもらい」とも呼ばれます。
症状
まぶたの赤い腫れが特徴的な症状です。また、瞬きをしたときなど、痛みが生じます。その他、めやに、痒み、ゴロゴロとした異物感などが見られることもあります。
原因
ブドウ状球菌などの細菌感染を原因とします。また、ストレスや睡眠不足・体調不良などで体の免疫力が落ちている、目のまわりが不衛生であったり、手で触る癖があったりすると、感染しやすくなります。コンタクトレンズの管理にも注意が必要です。体質によっては、夏の季節に起こりやすい方もいます。
ものもらいは人にうつるって本当?
ものもらいってどれくらいで治るもの?
発症後数日で皮下に膿が出て、通常はその後間もなく治ります。ただ、中には重症化するものもありますので、眼科を受診しておくのが安心です。
治療
麦粒腫の治療では、抗生剤入りの点眼薬・眼軟膏を使用するのが基本です。内服薬を使用することもあります。また、膿が自然排出されない場合には、排膿のために切開を行います。
霰粒腫とものもらい(麦粒腫)の違い
霰粒腫 | ものもらい(麦粒腫) | |
---|---|---|
概要 | 慢性の肉芽腫性の炎症。 まぶたの内側のマイボーム腺に肉芽腫が生じる。 |
急性の感染性炎症。 まぶたの脂腺・汗腺で細菌感染が起こり、しこりが生じる。 |
原因 | 疲労・不規則な生活・ストレスなどに伴いホルモンバランスが変化し、 マイボーム腺の出口が詰まり慢性炎症を起こすことによる |
目のまわりの不衛生・コンタクトレンズの管理不足などによる ブドウ状球菌等の細菌感染による |
症状 |
・まぶたの腫れ |
・まぶたの赤い腫れ |
治療 |
・切らない治療 |
・抗生剤入りの点眼薬 |
形成外科
当院では、形成外科医による外科的治療も行っております。(基本的には全て保険診療です)
粉瘤(アテローム)
皮膚が内側に入り込んで袋状の組織を形成し、垢・皮脂が溜まることで次第に大きくなる良性腫瘍です。背中、首、顔での頻度が多いものの、体表のどの部位にでも生じる可能性があります。
粉瘤(アテローム)治療
切開して腫瘍の袋と内容物を取り出す「切開法」と、円筒状のメスでくり抜く「くり抜き法」があります。
脂漏性角化症(老人性イボ)
主に加齢を原因として出現・増加する良性腫瘍です。見た目がほくろとよく似ています。良性であり悪性化することはほとんどありませんが、見た目が気になる、髭剃りのときに邪魔になるといったことで受診される方が多くなります。
脂漏性角化症(老人性イボ)の治療
液体窒素で病変を凍結させる冷凍凝固、電気メスや炭酸ガスレーザーによる削切といった治療があります。
脂肪腫(リポーマ)
皮膚と癒着していない脂肪のかたまりです。基本的に良性ですが、稀に悪性のものも見つかります。背中、肩、臀部などに出現することが多くなります。粉瘤とよく似ているため、その鑑別も重要です。
脂肪腫(リポーマ)の治療
局所麻酔下での日帰り摘出手術を行います。大きな脂肪腫、筋肉に入り込んでいる脂肪腫の場合は、入院した上で全身麻酔での手術が必要になることがあります。
ウイルス性イボ
ヒトパピローマウイルスなどのウイルスが小さな傷から入り込んで感染し、イボを形成します。通常、痛みはありません。
ウイルス性イボの治療
液体窒素による冷凍凝固による治療が一般的です。手のひら、足の裏といった角質が厚い部位の場合は、電気メスや、炭酸ガスレーザーで角質を蒸散させてから冷凍凝固を行うこともあります。
母斑(ほくろ)
母斑細胞が増殖してできる腫瘍です。基本的に良性ですが、ごく稀に悪性のものも見られます。
体表でほくろが50個以上ある場合、がん化する可能性が高くなると言われています。ほくろの数が急に増えた、大きくなった、出血したというときにはお早目にご相談ください。
母斑(ほくろ)の治療
電気メスや、炭酸ガスレーザー、あるいは外科的な手術によって除去します。